射撃祭 2014 6 1
スイスには、「射撃祭銀貨」というコインがあります。
このコインは、1800年代の半ばから発行されており、
途中、中断もありましたが、
今も「現代射撃祭」というコインが続いています。
こうしたコインの裏側には、銃が描かれています。
さすがに、銃所有が文化のような国であるアメリカですら、
銃が描かれたコインは少ないと思います。
スイスで、このような記念コインがあるということは、
実際に、「射撃祭」という行事が行われていることを意味します。
この祭りは、地域によって違うかもしれませんが、
少年射撃祭というものがあり、
将来の軍人を養成するという目的で始まったものと聞いたことがあります。
現代では、少女も参加できるようになったといいます。
スイスでは、国民皆兵制なので、
こうした射撃祭からも、「お国柄」を推定できます。
要するに、スイス国民の男性は、全員兵士であるということです。
なぜ、このような話を持ち出したかというと、
日本の不勉強な学者や評論家が、時々、
「日本も、スイスのような永世中立国がよい」と言うからです。
永世中立国を維持するということは、
いかに厳しいことかを理解してもらうために書いたのです。
基本的には、NATOのような集団安全保障体制か、
日米安全保障条約のような体制の方が楽なのです。
スイスのように一国で永世中立を維持するには、
それこそ、国民皆兵制で、
さらに国土を軍事的な要塞のようにする必要があります。
要するに、相手国に、
「この国に攻め込んだら損だ」と思わせるような軍事力が必要になるのです。
スイスの永世中立は、
日本人が考えるような「空想的中立」とは違うのです。
スイスは、第二次世界大戦中は、
連合国に対しても枢軸国に対しても「中立」を保ちました。
つまり、スイス軍は、
1907年のハーグ条約で定められた国際法上の「中立義務」を果たすために、
スイスの領空を侵犯する航空機があれば、
連合国側・枢軸国側を問わず、迎撃したのです。
今の日本に、ここまでの覚悟があるのか。
いや、ないと思います。
だから、軽々しく「スイスのような永世中立国がよい」と言ってはならないのです。
さて、実は、欧州には、
軍事的に、スイスと似たような国家がありました。
それが、フランスです。
フランスは、冷戦時代、外交において、
アメリカからもソ連からも一定の距離を保ち、独自の外交を行いました。
それを見て、日本人は、「うらやましい」と思うでしょうが、
フランスは、核武装した上に、原発大国です。
核兵器によって、軍事的に国家の独立を維持し、
原子力発電によって、エネルギーの独立を確保したのです。
ここでも、日本人が考える「空想的な平和」と大きく違うことがわかるでしょう。
日本が、スイスの道を歩むにしても、
フランスの道を歩むにしても、いずれにせよ「険しい道」となるでしょう。
当面は、日米安全保障条約でよいでしょうが、
やがて、アメリカが衰えてきた時に、どうするか。